2012年12月26日水曜日

⑤隠れ谷 フォブジカ

隠れ谷 フォブジカ  →地図⑤


首都ティンプーから145km(5時間)、ウォンディフォダンからは75km(2.5時間)。
ドチュラ峠、さらにラワラ峠を越えていく。     (→参照「ドチュラ峠」
標高は3000m。
谷全体が高地で、浅い谷。
ティンプーと300mほどしか変わらないけれど、冬は標高差以上に大変寒い。
氷河に侵食されてできた谷がU字に広がっている珍しい地形。


谷の中央部は夏場は湿原になり、そこへ毎冬ヒマラヤを越えてオグロヅルが越冬にやってくる。
そのツルが電線にひっかかることがないようにと、電線を引くことをせず、
谷の住民たちはあえて電気のない生活を選んだ。
利便性よりもツルを保護することを選んだことで、世界的に有名になった谷。
まさに「国民総幸福量」を唱えるブータンというものを考えさせられるエピソードだ。

現在は電線が地中化され一部の住宅では電気が使えるようになっている。
この谷の美しさは、人々の心の美しさと同様に変わることなく、
ブータンの隠れ谷として存在し、そのままのブータンに触れることができる場所だ。






オグロ鶴保護センター(ケベタン自然研究センター)

和名はオグロヅルというから、日本ではお尻の黒さに注目したのだろうか。
首の部分が黒いことから英語では「Black Necked Crane」と呼ばれているのが、
和洋の注目点の違い?とおもしろいところ。
ブータンン人は、「トゥントゥン」と呼び天国の鳥として大切にしてきたそうだ。

トゥントゥンは、越冬のために毎年チベットからブータンに飛来してくる。
その最も有名な飛来地がこのフォブジカ谷。
世界的に生息数の少ないオグロヅルが、このフォブジカで200~500羽越冬する。

鶴のために長く電線をひかなかった谷の住民のエピソードは心に訴えるものがあるが、
ブータンは環境破壊をしてまでも、観光地化することはない、
なぜなら自分たちの幸せの根本にあるのは、環境が大事に守られているからという考え方があるからだそうだ。
フォブジカは、いまやブータンの自然保護の象徴となっている。

オグロヅル保護センターでは、観光客などが湿原に入ってツルに近づかないように
常時監視し、鶴の保護を行っている。
ガラス張りのフロアから設置された双眼鏡でオグロヅルを見ることができる。

日本ブータン友好協会がブータンに寄贈したツルの模型。
これだけの模型を作る技術があるなんて日本はすごい、とブータン人が言っていた。
「JapanーBhutan Friendship」
なんていい言葉なんだろう。


あたりの地図があった。
ふむふむ、このあたりが湿原で、なるほどなるほど、このあたりに鶴がたくさん飛来するのだな。
鶴以外にもいろんな動物がこの谷にはいるんだな。



ん?
あれ?
トラ? 
これは、くま?
えっ??  こんなのも出ちゃうの???
ガイドに尋ねてみると、 「いるよ!」 とのこと。
「会ったことあるの?」と聞くと、「ヒョウはないけど、くまとトラにはある。」
「その時どうしたの?」と尋ねると、
「距離が近かったらもうダメだけど、距離があったから目をあわさずに逃げた。」
なんと!!! うーーん、恐るべし、自然保護区フォブジカ。



ネイチャートレック

氷河後退が形成した谷を周遊する、標高3000m、約2時間のお散歩。
では、いってきまーす!

ガイドと2人、のんびり歩く。
ガイドは紅茶の入ったアルミのポットをもって、てくてく歩く。
いいお天気の下、牛や馬に混じって、さりげなくオグロヅルもいる。

空は透き通って真っ青。 山も空も何もかもがすぐ近くにあるような感覚。
森の中を歩いていると、松の木に牛の頭蓋骨が。
ぎゃ! び、びっくりした! 
でもなんだか かっこいいような気も。
しばらく歩くと、前から女性が2人、大きな木をかついで歩いてくる。
すごい、ブータンの女性はすごいな。

休憩ができる展望ポイントに到着。 谷の向こうがわからこちら側まで歩いてきたぞー。
向こう側には泊まっているホテルや、オグロヅル保護センターが見える。
すごくちっちゃいけど、見えるのだ。
















一息休憩、ティータイム。
ミルクティーの入ったポットと、ガイドのリュックにはマグカップも二つ入れてくれていて、
ガイドがミルクティーを注いでくれる。
2人で絶景を見ながら、風に吹かれてミルクティーを飲む。
おいしいー!!!! なんてぜいたく!
ミルクティーに欠かせないビスケットやクッキーは、
ミルクティーにドボンとつけながら食べるのがブータン流。
フォブジカ谷一望。 すごい絶景。
さあ、ではまた出発。
あちら側にかえっていくぞー。
ガイドが声を上げて指さすので指さす方を見ると、オグロヅルが2羽空を飛んでいくところだった。
大湿原、大草原、大自然。
その中を2人の女性が歩いている。
すごい、人がこんなにちっちゃい。 
自然がこんなに大きい。
そして、本当にこの大自然の中に当たり前に生活している。
女性たちは買い物にいった帰りだった。

ガンテ・ゴンパ

西ブータン最大ニンマ派寺院がフォブジカにある。    ※「ゴンパ」=「大きな寺」
例によって道内の撮影は不可。
敷地内には僧侶たちの部屋が並ぶ。
僧侶たちも今はちょうど冬休みでほとんどいないのだとか。
寒い寒い、水が凍り付いている朝だった。
そしてやっぱり、どこにでも犬がいるのだ、ブータンは。




フォブジカ谷のいろんな風景

オグロ鶴保護センター近く、私の泊まったホテルの近くということだが、
ずっと、チリンチリン~♪ チリンチリン~♪
という、きれいな音色が止まることがなかった。
なんだろう、この音色はと心地よく思っていたら、オグロ鶴センターのとなりの斜面に三つのニマ車があり、
山から流れる水の流れを水車で利用し、ニマ車を常に回転させ、
ニマ車がベルの音を常に響かせる仕掛けになっていた。    (→参照「ブータンのチベット仏教 ニマ車」) 水の流れが止まらない限り、ニマ車は回り続け、このベルの音もとまることはない。
この谷の人たちは常にニマ車のお経とベルの音に守られているのだ。
その三連水車のニマ車のとなりにはいくつものダルシンが風にたなびいている。
ダルシンも谷の人々に、風にお経をのせて運んでいる。
みなに、等しく。
国民みなが等しくお経に守られ幸福でいられるように。
オグロヅル保護センターを出たところに座ってロープを紡いでいるお父さん。
材料は、米が入っていたナイロンの袋。
それを細長く切って、ねじって寄り合わせてつくる。
すごいなあ。 
ものは智恵で作っていく。 私たち日本人って、ものは買うもの。
とりあえず100円ショップに行け、という感じ。
これじゃ、日本人の頭はどんどん考える力をなくして、アホになっちゃうなあと思う。
圧倒的自然の中で、子どもたちも牛や鶴、寒さと共存して、考えながら生きるのだろう。
この時、氷点下の寒さだったのだけど、薄着でサンダル履きの子どもたち。
泥水遊びをしていた。
健康だ、風の子だ、日本人の子どもはぬくぬくしすぎだー!
「年寄りが育てると子どもに厚着をさせすぎる」
と私の家族がいった言葉だが、 年寄りに限らず、日本では大人が自分の寒さを基準にして子どもの抵抗力を弱くしていたり、
きれいに、清潔にとやりすぎて、これまた子どもの抵抗力を奪っている面があるのだと思う。
タイでもそうだったが、ブータンの子も、
「ハイ、石けんつけて手を洗って~、指の間も、ホラ、爪の間も洗うのよ~」
なんて言われてないし、だけどたくましく生きているもの。
谷にある村。
この村には水道は引かれていないのか、共同の水くみ場に女性たちがたくさん集まり、
洗濯をしている姿を見た。
水くみをして帰る女性の姿も。

商店もあり、お菓子やちょっとしたものはけっこうそろっている。 ご主人の笑顔がすてき。
ティンプーからは5時間ほどかかるこのフォブジカ谷。
道路の舗装はほとんどされていなくて、土埃がたち、あちこち岩もゴロゴロしている、
車も揺れる揺れる、激しく揺れる。
牛の群れがの~んびりと横切っていったり、山道にはヤックもいたり。
ヤックは危険だから車から降りてはいけないと言われ、車の中からじっと見る。



ホテル ガキリン・ゲストハウス GAKILING GUEST HOUSE

長く電気がなかったが、2011年11月に電化された。
このゲストハウスもつい最近までは暖をとるのは薪ストーブのみ、
シャワーはなくバケツにお湯をもらって浴室で浴びるしかない質素なロッジであったのが、
2012年8月に新館も完成し、ホットシャワーも使えるようになった。
ベランダからの谷の眺めは最高。
外に出て谷を眺めていると、頭上から「ハロー!ハロー!」と声がする。
見上げるとここで働くかわいい女の子が
「何してるの?どこに行くの?そこは寒いでしょう?あがっておいでよ、ここはあたたかいよ!」
まだ作りかけのコンクリート丸出しの階段を上がり、2階の客室へ上がる。
ブータンの家屋のペイントは本当に美しい。
部屋はロッジ風でできたての気のいい匂いがする。

ベランダ越しに見ても、絵画のような眺め。

電化されたばかりで、電気が安定していないのだろう。
机の上にはロウソクがたてられ、しっかりと使った跡が。
そして、さすが標高3000m。 
持って来たお菓子やクリームなど全てがパンパン。  破裂しそうにパンパン。
夕食はあたたかい薪ストーブがある食堂へ。
高校生くらいの男の子と女の子が手伝いをしている。
民族衣装姿がかわいい。
そして、こっちもかわいい、ブータンではどの家庭にも必需品のポット。中国製品らしい。
フォブジカは気温が低く、米がとれないため、代わりにジャガイモを育てるのだそうだ。
夕食はまた野菜がいっぱいの料理で嬉しい。
フォブジカ産ジャガイモもあるし、なんとこれは豆腐なのだ。
自家製バターやチーズを使った朝食もおいしく、
自家製のバター茶はちょっとしょっぱかったけれど、これもおいしい。
ゲストハウスのちょっと下手にこのホテルの人たちが過ごしている家があり、
ガイドや運転手たちもそこでおしゃべりしたり、テレビを見たりして過ごしている。
テレビはとても大事な娯楽であるようで、みんなテレビを囲み、 釘付けで見ながらよく笑う。



二泊したうち、ちょうど2日目がフルムーンの日だった。
フォブジカ谷で、満月を見上げる。
 なんて幸せ。





















朝のフォブジカ谷も絶景。 静かで美しい。














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